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20話. シェフが打ち明けた理由

Author: 6jay
last update publish date: 2026-09-24 21:14:27

着信音は止まらず、暗いキッチンに響き続けた。

リビングのソファの下で、タブレットに赤い文字が点滅する。

【発信:横浜物流本部 結城貴之常務】

紗月の呼吸が止まりかけた。

冷たい天板に横たわる体へ、また恐怖が忍び寄ろうとする。

蓮の目が細くなった。だが、その手は先に動いていた。

頬を包み、画面から顔をそらさせる。

「見なくていい。私が切ります」

コックコートを羽織り、リビングへ出てタブレットの電源を落とした。

続けて、ホームカメラのサーバー接続も切る。

騒がしい警報が途絶え、キッチンはまた静かになった。

紗月が腕を伸ばすと、蓮が抱き上げ、冷たいテーブルからベッドへ運んだ。

鎖骨まで布団をかけてから、キッチンで温かい飲み物を作って戻る。

牛乳に、ほのかなナツメグとバニラを加えたものだった。

甘く優しい香りが、部屋を満たす。

「温かいうちに。少し、落ち着くと思います」

カップを持たせ、蓮が隣へ座った。

紗月は両手で包み、ひと口飲む。

甘く柔らかな温もりが胸を通り、強張った肩がゆっくりほどけた。

「蓮さん……どうして、ここまで私を助けてくれるんですか」

同情だけで、ここまで来たのではない。

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